忙しいが「ビジネスに効く」と言われると読みたい。ビジネス書は働く人の悩みに応えてきた(写真:paprikaworks)

 強烈なメッセージを発して迷えるビジネスパーソンをひきつけるビジネス書。ビジネス書のベストセラーを追うと、社会や価値観の変遷が見えてきた。AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より。

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 最近のビジネスパーソンの読書傾向について、丸善丸の内本店和書グループビジネス書担当の宗形康紀さんはこう言う。

「あくまでも私自身の感覚ですが『教養的なもの』が好まれているように思います。当店1階はビジネス書売り場ではありますが、その中の話題書の棚で語学書や哲学、歴史、自然科学関連の、いわゆる『教養書』と呼べるタイトルも常に展開しています。もちろん差はありますが、全体的によく売れている印象があります」

 日本のビジネス街の中心地にあるという土地柄か、稀に丸の内本店のみで突出して売れる書籍が出てくることがあるという。

「直近で印象に残っているのは『日本国債入門』(金融財政事情研究会)です。タイトル通り国債にかかわる様々な概念を解説するテキストで、SNSでも話題になりましたが、こうしたタイトルが積んだ端から売れていくというのは丸の内にしかない売れ方だろうと思っています」

 日本のビジネスパーソンはどんな本を読んできたのか。2004年創刊の日刊書評メルマガ「ビジネスブックマラソン」編集長の土井英司さんはこう語る。

「バブルも崩壊し日本の凋落が始まった90年代から産業シフトが起こります。モノづくり中心の国だった日本がサービス産業に転じ個人主体の価値観に変わっていきます。2000年代にそれが顕著になり、人びとが自己啓発に振れていく。そこでビジネス書の需要が出てきます」

自信を失った日本に

 バブル崩壊後の日本が自信を失い海外から学ぶという潮流の中、翻訳書のベストセラーが目立つようになる。東日本大震災で「私たちの生き方はこれでいいのか」という考え方のシフトがあり、同時に12年あたりからスマートフォンが普及し始め「ソーシャルな価値観」が浮上、人間関係が村社会化していく。20年代のコロナ禍でYouTube発の本がベストセラーになっていく──ビジネス書のベストセラーの変遷の背後に、そのような社会の変化が見えると土井さんはいう。そんな土井さんにお薦めのビジネス書を教えてもらった。

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