「『バブルの物語』はオランダのチューリップバブルから始まり、バブルの歴史自体をひもといています。『7つの習慣』は仕事術の基本中の基本。有名な『時間管理のマトリックス』だけでも読んだ方がいいと思います。緊急度と重要度でマトリックスを組んでいます。すべての知識労働者に必要なものだと思います。『ザ・ゴール』も仕事術の本ですが、ビジネス小説でもある。生産性を上げるためのコツを学べます。『稲盛和夫の実学―経営と会計』ですが稲盛さんの本の中でイチ押しです。経営者目線で会計を理解できます。『人生がときめく片づけの魔法』はアメリカでも大ブームになりますが、資本主義や物質主義への反省がある。近藤さんがGoogle本社で講演したことからもわかるように、知的労働において捨てることは大事なことなんです」
人文書コンシェルジュで月曜社取締役の小林浩さんは言う。
「ビジネスパーソンが教養書を読む時、西洋の近代主義とどう対峙していくのかという課題があると思います。西洋モダニズムのポイントは四つあり、合理的思考、技術革新、科学万能信仰、資本主義です。日本の高度経済成長の課題として、モダニズムも取り込むとともにどうそれを乗り越えるのか、つまり近代の超克という問題があります」
そんななかで90年代以降にビジネスパーソンにもよく読まれた人文書を小林さんに挙げてもらった(下記参照)。(ライター・本山謙二)
土井英司さんが選ぶビジネス書10冊
『バブルの物語』/ガルブレイス著、鈴木哲太郎訳/ダイヤモンド社
『7つの習慣』/コヴィー著、川西茂他訳/キングベアー出版
『金持ち父さん 貧乏父さん』/キヨサキ、レクター著、白根美保子訳/筑摩書房
『ザ・ゴール』/ゴールドラット著、三本木亮訳/ダイヤモンド社
『稲盛和夫の実学―経営と会計』/稲盛和夫著/日本経済新聞出版
『鏡の法則』/野口嘉則著/総合法令出版
『人生がときめく片づけの魔法』/近藤麻理恵著/サンマーク出版
『嫌われる勇気』/岸見一郎、古賀史健著/ダイヤモンド社
『SHOE DOG』/ナイト著、大田黒奉之訳/東洋経済新報社
『頭のいい人が話す前に 考えていること』/安達裕哉著/ダイヤモンド社
小林浩さんが選ぶ読まれた人文書10冊
『地中海』(全5巻)/ブローデル著、浜名優美訳/藤原書店
『ソフィーの世界』/ゴルデル著、池田香代子訳/NHK出版
『存在論的、郵便的』/東浩紀著/新潮社
『バカの壁』/養老孟司著/新潮新書
『14歳からの哲学』/池田晶子著/トランスビュー
『超訳 ニーチェの言葉』/白取春彦編訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン
『これからの「正義」の話をしよう』/サンデル著、鬼澤忍訳/ハヤカワ文庫
『21世紀の資本』/ピケティ著、山形浩生他訳/みすず書房
『サピエンス全史』(上下)/ハラリ著、柴田裕之訳/河出文庫
『人新世の「資本論」』/斎藤幸平著/集英社新書
※AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より抜粋