喫煙しない人が食道がんになるリスクを1とした場合、喫煙する人のリスクは約3倍、1日20本のたばこを20年間吸った人のリスクは約5倍になるといわれています。大塚医師は、受動喫煙にも気をつける必要があるといいます。

 ほかにも、野菜や果物をあまり食べないためにビタミンが欠乏することも危険因子とされ、緑黄色野菜や果物の摂取は予防に効果的といわれています。辛いもの、熱いものをよく食べることも影響すると指摘されています。

 食道がんの初期には、症状はほとんどありません。進行すると、胸の違和感、食べ物をのみ込んだとき胸の奥のほうがチクチク痛む、熱いものをのみ込んだときにしみる感じがする、といった症状が表れます。これらの症状は一時的で消えることもありますが、放置せず、消化器内科で内視鏡検査を受け、食道の状態を確認しましょう。

 さらに進行してがんが大きくなると、飲食物が食道を通りにくくなり、つかえるようになります。すると食べる量が減り、体重が減ってきます。また、胸には肺や背骨、気管や気管支、大動脈、声帯を調節する神経(反回神経)などがあり、がんが食道の外へ広がったりすると、胸や背中の痛み、せき、声のかすれなどの症状が起こってきます。

 自覚症状があって検査を受けた場合は、ある程度進行していることが多いので、早期発見のためには、定期的に内視鏡検査を受けることが必要です。

「お酒好き、たばこ好きの人に、飲酒や喫煙は絶対にダメとは言えません。では、どうすればいいのかというと、40歳ぐらいから毎年内視鏡検査を受けて、食道はもちろん、咽頭、喉頭をチェックしてほしいと思います。危険因子がない人は50歳を過ぎたら、2~3年ごとに検査を受けましょう」(大塚医師)

 大塚医師は、「バリウムを使う造影検査でもいいですか」と聞かれることがよくあるそうです。しかし、内視鏡検査のほうが、粘膜のわずかな変化をとらえることができるので、やはり内視鏡検査をすすめています。

 がんがあるかどうかは、多くの場合、内視鏡検査で明らかになります。通常の内視鏡検査に加え、色素を散布したり、特殊な光で照らしたりして粘膜を観察すると、がんの範囲の正確な診断に役立ちます。また、組織を採取して顕微鏡で調べ、がんの特徴(組織型)を診断します。

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CT検査では何がわかるのか