手術後には、早食いすると誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすく、食事量が減って体重減少や体力低下が起こりやすくなります。また、手術直後は呼吸がしづらく、痰(たん)も出しづらくなって、肺炎が起こることもあります。そのため大塚医師は、喫煙している人には、まずは1カ月以上の禁煙を徹底するよう指導しているそうです。さらに手術前、手術後のリハビリも重要です。

 例えば呼吸訓練について、大塚医師は次のように話します。

「手術の前から、自宅で手軽な器具(呼吸訓練器)を使ってトレーニングしてもらいます。息を吐いてからマウスピースをくわえ、深く息を吸い込むと、インジケーターの印が動き、自分の吸気量がわかります。手術前に吸気量2500mlぐらいだった人も、手術後には500mlぐらいまで下がることが多いです。手術前は2500mlでしたね、それを目標にトレーニングしましょうと、手術の翌日から取り組んでもらいます」

 一般に手術後の1回の食事量は、手術前の5~6割に減ります。その分、食事の回数を増やし食事量を確保します。大塚医師によると、もともと高血圧や糖尿病などの生活習慣病があった人では、手術後に食事量が減ることで、それらが改善する例が多いとのこと。

「なかには、体重が減ることなく体形を維持している人もいます。経過観察のため受診する人には食事や運動について必ず聞いていますが、筋トレをして、たんぱく質を多くとるようにしている人は、体重を維持し活発に活動しているという印象を持っています。逆に、家にいることが多く、軽い散歩程度であまり運動していない人は、食べる量が減る傾向があるように思います」

 以前に比べ手術で受ける負担が減ったとはいえ、術後に食事の工夫をしても思うように食べられず、心配で何ごとにも消極的になりがちです。活動量が減ると、おなかも減らず、食べる量がますます減ってしまうことも考えられます。できるだけ前向きな気持ちで運動や趣味などの活動をおこない、生活を楽しむことが大切といえそうです。

(文/山本七枝子)