中日・小島弘務(元住友金属)は、前年ドラフト外で西武と契約しながら、野球協約違反で契約無効となり、1年間、孤独のトレーニングを続けてきた。「一浪の結果がこうなって、うれしい」と新人王を目標に掲げ、1年目に6勝を挙げた。

 小池を外したら達川光男の後継捕手と決めていた広島は、瀬戸輝信(法大)、日本ハムもターゲットを即戦力野手に切り替え、住吉義則(プリンスホテル)を指名。また、西武は中央では無名の長見賢司(伊丹西)、近鉄は甲子園で活躍した寺前正雄(北陽)といずれも高校生右腕を外れ1位で指名したが、主に第2の捕手として14年間プレーした瀬戸以外は、活躍できずに終わっている。

 前年に比べて外れ1位の成功組が少ないのは、89年は単独1位指名も広島・佐々岡真司(NTT中国)、西武・潮崎哲也(松下電器)、中日・与田剛(NTT東京)と逸材揃いで、のちに“黄金ドラフト”と呼ばれたのに対し、90年は小池が唯一の目玉と言ってもよいほどの不作年だったことも影響したようだ。

 その小池も「一番行きたくない球団」ロッテを拒否し、2年後、相思相愛の近鉄に単独1位指名で入団している。(文・久保田龍雄)

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