国家と国家の間で交わされる武力による争いは新たな問題を生むだけであり、ここでもやはり、真っ先にひどい目に遭わされるのは一般の人たちなのだ。とりわけイラン国外に逃げ場のない地元の人たちのことを考えると胸が苦しくなり、親しくなった何人もの顔が思い浮かぶ。
米国や欧州連合(EU)、日本といった世界の主要国は引き続き、イランとイスラエルに自制を呼びかけるべきである。ただ、どうしても気になることがある。駐日イラン大使館は4月18日にXへの投稿で、西側諸国の対応を「常習的なダブルスタンダード」、つまり二重基準だと非難して概ねこう訴えた。
・イスラエル側が国際法に違反してイランの在外公館を攻撃しても、西側諸国は国連安全保障理事会による非難声明の採択を妨げる一方で、イランには自制を求める
・イランが国連憲章に従って自衛権を行使すると、国連安保理はイランを非難する一方で、イスラエル側を味方する
さらに、米英やEUによる新たな制裁はイランにとって不公平であり、不満を積み増す要因だ。こうしたなか、イランに残された外交上の道は「仲間」である中国とロシアを頼ることであり、「三カ国の枢軸」とも呼ばれる関係性は強まるばかりだ。
イラン側が「二重基準」だと受け止め、反発を招くような対応を続けていると、自制を求める声はむなしく響くだけであり、「表の戦争」を常態化させかねない。(敬称略)