その要因としてはやはり高校時代の完成度の高さが考えられる。ここで挙げた11人の投手のうち千賀、山本、戸郷を除く8人は1位(高校生ドラフト1巡目を含む)指名であり、プロからの評価が元々高かった選手と言えるのだ。ダルビッシュ、前田、大谷、佐々木などは体力的な面には不安があったものの、高校時代から投手としてのセンスはずば抜けたものがあったことは間違いない。

 もう一つの要因は、やはりプロの高いレベルに合わせて自身も急成長したという点である。特に育成出身の千賀や支配下の最下位指名だった戸郷などはその例にピッタリ当てはまる。千賀は全く無名で、戸郷は肘を使わない独特の腕の振りが懸念点となって順位は低かったが、わずか数年でチームの中心選手となっている。彼らのような素材を見抜くことは難しいが、一定数はこのような“大当たり”が潜んでいることは確かだろう。また戸郷は最初から先発だったものの、千賀と山本は一軍のキャリアはリリーフからスタートしており、下位指名の選手が短いイニングで自信をつけて先発に転向するというのも一つのルートと言える。ちなみに平良海馬(西武)も4位指名で入団し、3年目には33ホールドをマークするブレイクを見せ、6年目の昨年から先発転向となった。

 では逆にブレイクが遅くてもエースとなった高卒選手は存在しているのだろうか。数少ない例としては菊池雄星(ブルージェイズ)が挙げられる。6球団競合という目玉として西武に入団したものの1年目は故障とフォーム改造の失敗で二軍暮らしが続き、2年目と3年目もともに4勝という成績に終わっている。4年目にようやく9勝をマークしたが、その後の2年は成績が伸びず、初の二桁勝利は7年目だった。

 菊池と少し近い感じでエースとなりつつあるのが西武の後輩である今井達也だ。1年目は故障で一軍登板がなく、2年目に5勝、3年目に7勝をマークしたものの、なかなか殻を破れず、昨シーズン7年目にして初の二桁勝利にようやく到達した。今年はここまで4試合に先発して2勝0敗、防御率0.64と圧倒的な成績を残しており、覚醒を予感させている。菊池と同様に一気にエースとなることも期待できそうだ。

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今季がプロ3年目の高卒投手はどんな顔ぶれ?