「即レス」も存在承認の一つだ。部長や課長、他の先輩からのメールにはレスが速いのに、自分のメールへのレスが遅いと、

「自分の存在が軽んじられている」

と思い込むものだ。どんなに傾聴を心がけていても、いつものメールのレスが遅いのであれば、マイナス効果のほうが高い。自分の都合のいいタイミングで

「何でも話を聞くぞ」

「困ったことがあったら、いつでも相談してくれ」

と呼びかけても、部下はその気にならない。日ごろから自分の存在をスルーしておいて、それはないだろう、と部下は思うからだ。評価や待遇を改善するより、まずは日ごろの「アクノリッジメント」に力を入れよう。

期待度が低ければ、成果も出ない

 最後に、新人に対してみなさんにやってほしいことがある。それが「期待」である。「褒める」ことは何らかの成果を出した「後」でなければできないが、「期待」するのは「前」でもできる。つまり、「褒めて伸ばす」ではなく、「期待して伸ばす」ことを意識してほしい。世の中には、

「人に期待しない」

 と言う人は多い。相手に期待するからこそ腹が立つし、口を出したくなる。期待しなければ、イライラせずに人と接することができる。お互いの関係は良好になる、という言い分だ。

 この考えに、私は、まったく共感しない。その姿勢は、相手に対して失礼だと思うからだ。期待とは、相手に投資することだ。自分の情熱をお裾分けするわけだから、その投資した分だけの情熱を回収できなかった場合は、腹が立つ。期待を裏切られると、イライラするのである。

 しかし、ビジネスは常に投資だ。人に期待するときも、自分が何かにチャレンジするときも、必ず何らかの投資をしている。リスクのない仕事なんて、ありえない。自分の期待通りにならなければ残念だし、頭にくる。しかし、期待通りにリターンがあれば、大きな喜びを得られるものだ。

 必要以上にプレッシャーをかけなくてもいい。しかし「期待」はしよう。パフォーマンス的にも、他者からの期待を受けることで成果を出す可能性が高まる「ピグマリオン効果」と、反対に期待が低いと、成果を出す可能性が低くなる「ゴーレム効果」という心理効果が知られている。

 親が子どもに期待をかけるように、みなさんが新人に「期待しているよ」と声をかけるのはとても大事な行為である。本人の前であろうが、本人がいないところであろうが、「期待していない」「どうせアイツは無理」みたいな発言はすべきではない。

 その気持ちは相手に伝わり、成果を出そうとする気持ちに影響を与えるのだから。

(横山 信弘:経営コラムニスト)

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