撮影/写真映像部・上田泰世

──LGBTの啓発活動にかかわろうと思ったきっかけは何だったのですか。

リ:私の周囲では20歳くらいになると友人の間ではLGBTをカミングアウトすることは当たり前のことで、特別なことではありません。私自身、パンセクシュアル(全性愛者)のカミングアウトもまったく悩まなかったというか……ま、自分のプライベートを明かすことになりますから、ほんの少し、1秒くらいは(笑)、悩んだかもしれないけど。アメリカでは、アジア人や日本人でLGBTをカミングアウトしてプレゼンテーションしている人が少ないので、LGBTの権利を得るために、私がアジアを代表する一人になってメディアに向けてプレゼンテーションすることは非常に重要なことだと感じています。

深刻なこと起きている

ち:私もリナさんと同じくLGBTは身近に、普通にあることでした。私のデビュー当時からの親友はゲイのダンサーなんですが、自分の作品に出てもらった時に、「ヒップホップはゲイのものじゃない」というコメントが来たことがありました。

リ:ひどい……信じられない。

ち:そのメッセージを見たとき「わ、なにこれ? 気持ち悪い」と率直に思いました。そもそもダンスもヒップホップも誰のものでもない。このコメントを見て、今、日本では、深刻なことが起こっているなと感じました。

──私たちができることはなんでしょうか。

リ:自分の子ども、家族のようにLGBTの人を愛してください。私がLGBTの権利について訴えているのは「愛は愛」だからです。だってLGBTの人も誰かの子ども、家族です。それなのに、その愛情を受けてない人がLGBTには多い。「カミングアウトしたら家族の愛を失うのではないか」と気にしている方がたくさんいます。

ち:やっぱり上の世代に理解してもらえないと残念に思います。

リ:日本女性、特に一定の世代以上の方に、トランスジェンダーをものすごく敵視する、差別する方がいます。トランスジェンダーを嫌う女性たちの多くが、日本の男尊女卑、女性蔑視の中で育ってきた世代であることから、問題の背景には日本の間違った価値観があるように感じます。でも私はその女性たちに「ターゲット(敵視する相手)が違いますよ」と言いたい。あなた方が女性蔑視、男尊女卑の中で生き抜いてきたフラストレーションと、今、トランスジェンダーの人たちとはまったく関係ない。トランスジェンダーを怒る、嫌うより、あなたの周囲の男尊女卑する男性に怒ってください。トランスジェンダーは自認する性として生きないと心が死んでしまう、病気になってしまう、自分らしさを失ってしまう人たちなんです。

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