■日本の性風俗は安く買いたたく
海外の同業者のネットワークも広いマリエさんは、同業で働くさまざまな女性たちを見る中で思うことがある。いわく「どれだけ稼いでも、結局はお金に振り回されているのでは」ということだ。稼いでも稼いでも「もっと稼がなきゃ」と、収入をキープすることに必死になる。だから同業者から「効率よく稼げるこの仕事を選んでいる」という言葉を聞いても、どこか自分自身に言い聞かせている言葉のような気がするという。
「これはこの職業や国籍に限らず、稼いでいる人が共通して無意識的に抱えている闇のようなものかもしれません。自分のビジネスがうまくいってしまっているがゆえに、私もここまで続けてきましたが、今の仕事はあと2年で辞めると決めています」(マリエさん)
一方、性風俗業の女性が海外に出稼ぎに行く動きは、今後ますます強まるのではという見方もある。他通貨に対して相対的な価値が下がる円安が進む現在、性風俗業に限らず、海外での仕事に目を向ける人がよりいっそう増加するのではという声もある。
「日本の性風俗業界が今のままである限り、海外に出稼ぎに行こうとする動きは加速するかもしれない」とは、性風俗業界の動きに詳しく、新刊『歌舞伎町と貧困女子』などの著書で知られるノンフィクション作家の中村淳彦さんだ。
中村さんいわく、AV業界では10年ほど前から、中国の富裕層を相手に、プロダクションが女優を売春させる動きも出てきているという。
「日本人女性の“市場評価”は世界的に見ても高い一方で、日本の性風俗業界では、男性が女性を安く買いたたいている現状がある。これまで日本では、男性が作った買春のシステムの中で働く女性が多かったのが、SNSなどの普及によって、従来のシステムにのっとらずとも仕事ができる時代になった。となれば、個人でしがらみがなく働きたいと考えたり、より稼げる相手に目が向くのは、ある種必然とも言える流れではないでしょうか」(中村さん)