「生活に困って仕方なく」「他に選べる仕事がなかった」──。性風俗の仕事に対し、どこかこんなイメージを持つ人も少なくないかもしれない。記者自身もそうだった。ところが取材の中で当事者の女性たちから出てきた言葉は、「効率よく稼げるこの仕事と働き方が気に入っている」「頑張ったら頑張った分だけ、目に見えて収入が増える」「やりがいを感じられる」と、意外にも前向きな言葉が多かった。
また「いずれは別の仕事をするつもり」と未来を見据える先に、心理学やカウンセリングへの興味を持つ女性が複数人いたことも印象的だった。客の中には、「外では常に気を張っている分、安らげる場所がほしい」という経営者や、「誰かに話を聞いてほしい」と孤独感を募らせるビジネスマンなどもいるという。「唯一、本当の自分をさらけ出せる場所」と、サービスを提供する場所が、いつしか大切な心の拠り所となっている客の姿も目の当たりにしてきた。女性たちは、性風俗の仕事をする中で、そうした人間のさまざまな面を見るにつれ、自然と心理学やカウンセリング分野への興味が湧いたと口をそろえる。現代の社会において、性風俗の仕事は、単に性的な快楽を提供するだけでなく、精神的な拠り所となっていることも実感させられた。
無論、法を犯すことは許されないが、職業選択の自由は、どんな人にも、どの業界にもあるはずだ。ある当事者は、こう語った。
「性風俗で働くことがつらい人もいれば、性風俗で働けないことがつらい人もいることをわかってほしい」
(フリーランス記者・松岡かすみ)
※週刊朝日 2023年1月20日号