昨年、警視庁では、生活に困窮した女性が都内の繁華街で売春を行うケースが増えたことなどを受け、検挙された女性を対象に自治体の相談窓口に同行するなどの支援を専門に行う担当者の配置を始めた。

 日本では売春防止法が存在するが、買売春そのものに対する罰則規定はなく、現在の法の下では買春した人も売春した人も処罰されない。罰則によって規制されているのは、勧誘(街頭での売春婦の「立ちんぼ」など)や、周旋(売春婦派遣の仲介・あっせんなど)、買売春を助長したり、そこから利益を得るような行為だけだ。

 一方、昨年5月にはDV(家庭内暴力)や性被害、貧困などさまざまな困難を抱える女性への支援を強化する新法「困難な問題を抱える女性支援法」が成立し、2024年4月から施行される。

■規制強化で失業や出稼ぎに懸念

 新法では、「売春を行うおそれのある婦女」を要保護女子とした婦人保護事業も盛り込まれるが、「性風俗業に従事する人への差別を助長させるのでは」と懸念するのが、性風俗業界で働く人の支援団体「SWASH」で代表を務める要友紀子さんだ。

 要さんは、新法によって、性風俗業界で働く人への風当たりが強くなり、法規制が強化されるなどで職を失う人が増えることを心配している。なぜなら日本国内で職を失うことで、海外に出稼ぎに行く流れが加速する可能性が拭えないためだ。

「実際に、AV業界ではすでに、懸念している現象が起こり始めています」(要さん)

 昨年6月に施行されたAV新法の影響もあり、AV女優はコロナ禍以上に仕事が減ると見られる。そんな中、昨年10月に香港で、日本人のAV女優が売春容疑で逮捕される事件が発生した。現地メディアの報道によれば、女優は複数の外国人売春婦の一人として逮捕されたという。

「日本の風俗の仕事が規制されて、海外でしか稼ぐ手段がなくなると、出稼ぎを考える人が増えてしまうかもしれない。出稼ぎはリスクが高く、不法就労などで逮捕されると人生のチャンスを棒に振ることにもつながる。危険な綱渡りをしなくても日本で十分稼げる環境が守られるよう願っています」(同)

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