拡声機を使ったヤジに言い返した乙武氏

 乙武氏が演説を始めると、途中、聴衆から拡声機を使ったヤジが飛んだ。乙武氏の過去の不倫問題についての内容だったようだ。乙武氏は2016年、参院選出馬を検討していたが、「5股不倫」などと週刊誌に報じられ、出馬を辞退することとなった。

 拡声機によるヤジは、まわりで聞いていてもうるさく、乙武氏の声を遮るようだった。内容も内容なだけに、さすがに乙武氏も耐えがたかったのか、ヤジが飛んでくる方向を見て激高して言った。

「お前ら、5股不倫してたと言ったけど、違うよ。お前の前提条件とは違うよ!」  

 乙武氏は今年4月8日、出馬表明をした記者会見で当時の不倫について触れ、「5股ではないです。15年間の結婚生活で5人ということなので、5人同時ということではないです」と話していた。

 ヤジはその後も続き、小池知事の演説が始まる前から、今度は週刊誌が報じた小池知事の「経歴詐称疑惑」についての内容だった。

余裕でいなした小池知事

「カイロ大学を卒業しているのか。ちゃんと説明しろよ、小池。開き直ってんじゃないぞ」

 などと口汚く続いた。

 これに対し、長年政治家としての余裕かキャリアの差か、乙武氏とは対照的に小池知事は完全無視。苦笑いで軽くいなしていた。

 その後、門前仲町のスーパー前に街頭演説にやってきた乙武氏。

「今回、私に一緒にチャレンジしましょうと声をかけてくれたのが小池百合子さんでした」

 と今回の出馬が小池知事の主導だったことを明かしつつ、 

「私は身体障害者です。生まれつき、両手、両足がありません。今、一人暮らしをしています。この体で一人暮らしと言っても大変なことがあるんです。たとえば、私は一人でトイレに行くことができません。お風呂に入ることもできません。そしてのどが乾いても冷蔵庫を開いて飲み物を取り出すこともできません」 

 と自身の生活を話し、 こう語った。

「重度訪問介護という制度を使ってヘルパーさんに助けてもらっているんです。でもこの制度は制約がある。家でゴロゴロしているだけなら公的補助がおりる。でも、いざ、働きます、仕事をしますとなると1円も出なくなるんです。だから、多くの重度障害者は働けずにいるんです。健常者ばかりの国会ではこういった論点が提示されないんです。他にもいっぱいあるんです。こういうことが」 

 そして、ここでも過去の行為について触れ、

「今回、また政治にチャレンジすると言ったことで、私の過去のことをいろいろ書き立てられています。それに対しては本当に反省するしかありません。恥じ入るばかりです。でも、この政治にかける思いだけは本物なんです」

 と主張した。

 選挙の前哨戦ともいえる告示前の“場外乱闘”の一幕。本戦では本質の政策論の戦いで聴衆を盛り上げてほしいものだ。投開票は4月28日に行われる。

 * * *

 東京15区補選に立候補を届け出たのは、以下の新顔8人と前職1人の計9人(前出の3候補含む)。

 NHKから国民を守る党新顔の福永活也氏(43)、無所属新顔の乙武洋匡氏(48)=国民民主党と地域政党・都民ファーストの会推薦=、参政党新顔の吉川里奈氏(36)、前自民衆院議員で無所属の秋元司氏(52)、日本維新の会新顔の金沢結衣氏(33)=教育無償化を実現する会推薦=、政治団体「つばさの党」新顔の根本良輔氏(29)、立憲民主党新顔の酒井菜摘氏(37)、政治団体「日本保守党」新顔の飯山陽氏(48)、無所属の須藤元気氏(46)。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

暮らしとモノ班 for promotion
大人も夢中!2024年アニメで話題になった作品を原作マンガでチェック