前半は、数こそ限られたものの、縦パスが入る場面も見られ、ウルグアイ戦から修正が施されていた。しかし、日本は次第に相手に試合の主導権を握られるようになっていく。球際の争いでことごとく優位に立たれたことが響いた。結果、全体の重心が下がり、先取点を奪いながらも逆転を許すことになった。
コロンビアの守備の修正が見事で陣形変更によってパスの出しどころを失った。日本も陣形を変更して対応したが、本分であるはずの強度を見せられず、相手のペースにのみ込まれた。ボールを前進させられる鎌田は所属クラブの試合が直後に控えているため、前半のみで交代。後ろでボールを回す時間が増えた日本は相手にとって全く怖さのないチームになってしまった。
■町野らを起用した理由
「これまでの選手を使えば、安定と安心はあるかもしれません。勝利を目指さなければいけないですが、同時に未来を見据えて選手個々のレベルアップと層を厚くし、戦い方の選択肢を増やすことも絶対に必要です。未来を見据えて後悔はありません」
町野修斗(湘南、23)、西村拓真(横浜マ、26)、バングーナガンデ佳史扶(FC東京、21)ら代表歴の浅い選手を先発させた意図について、森保監督はこう説明した。経験の浅い選手の起用が敗戦を招いたわけではないものの、強度不足に少なからず影響していた面もある。
とはいえ、彼らの存在は3月シリーズの収穫でもあった。前述の3人に菅原も含め、その起用が「未来を見据えた」ものだからだ。指揮官が期待する層の拡充は彼らの成長にかかっていると言っていい。いずれ花開くことになれば、その選択は全くもって正しかったことになる。
一方で、課題は今回の活動のテーマだった新戦術に関する全般だ。2試合目にいくぶん改善も見られたが、タイミングの共有、動き方の整理、そもそもの最適な人材の見極め、運用方法、短い時間での落とし込みとアプローチ。いずれも今回の活動では最適解を得られなかった。
無論、何かを断じるには時期尚早だろう。ただ、時間がないのも確かだ。今年11月にはW杯予選が始まり、来年1月にはアジアカップを控える。新戦術はあくまで本大会仕様と割り切っているなら3年3カ月の時間があるが、浸透度合いについては注視していく必要がある。この状態から目標とする状態に「期限内に」たどり着くのは、相当に難しいと思うからだ。
第2次森保ジャパンの船出は1敗1分けの未勝利に終わった。前回18年の第1次森保ジャパンが11戦無敗で始まったのとは、対照的なスタートになった。(ライター・佐藤 景)
※AERA 2023年4月10日号