MF三苫薫(左)はコロンビア戦の前半3分、MF守田英正のクロスを頭で合わせて先取点を奪う
MF三苫薫(左)はコロンビア戦の前半3分、MF守田英正のクロスを頭で合わせて先取点を奪う

 ただ、この新戦術は一朝一夕で習得できるものではない。19年にアンジェ・ポステコグルー監督(現セルティック)が横浜F・マリノスで実践してJ1制覇を成し遂げたが、結果を出すまでに2年の月日を要した。活動期間が短い代表ならなおさら時間が必要だろう。短時間で落とし込むのは相当にハードルが高い作業と言える。事実、初戦のピッチ上ではたびたび混乱が生じていた。

■形ありきだった第1戦

 左SBの伊藤洋輝(シュツットガルト、23)が内側に入った際に中央エリアで選手が渋滞する場面があり、右サイドでも前半は右サイドハーフの堂安律(フライブルク、24)と右SBの菅原由勢(AZ、22)のポジションが重なって攻撃が滞るシーンが見られた。

「攻撃の動かしのところでSBが中に入ったタイミングがどうだったのか。全部(内側に)入るのが本当に効果的なのか。そこの使い分けは絶対にしなければいけないと思う」

 ゲームキャプテンを務めた遠藤航(シュツットガルト、30)の感想が試合内容を物語る。いつ誰がどこに動くのか。まだまだ探り探りの状況だった。そして新戦術を消化することに選手が集中しすぎて、可能なら素早く攻めるという攻撃の原則が忘れ去られた。どこにポジションを取るかに意識が割かれ、どう攻めるかがおろそかになった。

 こうして形ありきとなったウルグアイ戦を反省し、選手たちは活発な意見交換を行った上で28日の2戦目、コロンビア戦(大阪・ヨドコウ桜スタジアム)に臨んだ。結果、やみくもにSBが内側に入るプレーは減り、相手のプレスがそれほど厳しいものではなかったこともあって、前半は主体的にボールを動かすことができた。

■ボランチ・鎌田の影響

 ウルグアイ戦でトップ下を務めた鎌田大地(Eフランクフルト、26)がボランチの一角を担った影響もあっただろう。鎌田は最終ラインからボールを引き取って前向きにプレーできる選手。そのため守田英正(スポルティング、27)が後方でボールのピックアップに奔走する必要はなく、ウルグアイ戦よりも高い位置に出ていく機会が増えた。

 三笘薫(ブライトン、25)の先取点や相手GKの好守により阻まれた後半21分の上田綺世(セルクルブルージュ、24)の豪快なヘディングを導いたのは、いずれも前に出張った守田のクロスだった。

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