電信詐欺の場合、裁判官の判決によっては、刑務所に送られないで済む場合もあれば、最高20年の懲役刑のケースもある。刑期の長さに驚くほど幅があるが、刑期の決め手となるのは何なのだろうか。
「複数の要素を考慮する必要があるけど、一般的には盗まれた金額が高ければ高いほど、刑期は長い傾向にある」とナフタリス。つまり約7億円という巨額が盗まれた事件となると、短い刑期で済む話ではなさそうだ。
政府に嘘をつくと罪に
大谷と水原は今後、法廷でお互い顔を合わせるのだろうか?
「かなり先のことだが、もし刑事裁判になれば、大谷が証人として出廷し『私の口座にアクセスして金を盗む許可を、彼に与えたことはない』と証言する可能性はある。ただ、水原の場合は、すでに公の場で自らこの件について発言してしまっているだけに、裁判までもっていくのは、非常に難しいだろうと思う」
水原は裁判で争う権利をあえて自ら捨て、検察と交渉して少しでも刑期を短くすることを選ぶ可能性が高いのではないか、とナフタリスは予想する。
その理由は、水原が口にした数々の「嘘」と「矛盾する発言」だという。
連邦検事補として犯罪捜査を10年以上経験する中で、ナフタリスはとっさに嘘をついてしまう人々をこれまで数多く見てきた。「よく勘違いされるんだけど、正式に宣誓しなくても、政府の捜査官に何か質問された時に嘘をつくと、それ自体が虚偽の申し立ての罪に当たる。これは連邦法に違反し、捜査官は見逃さずに追及する。連邦政府の捜査官は、事実をつきとめるのが仕事だから、嘘を非常に重要視するんだ。嘘を見破るさまざまな方法も身につけている」
韓国での開幕戦時に、水原がスポーツ専門メディアのESPNのティシャ・トンプソン記者のインタビュー取材に応じて「もう二度と同じことをしないと約束するなら、借金を肩代わりしてもいい」と言って大谷が自分を助けてくれた経緯を話したが、翌日、それは「嘘」だったと撤回した。この顛末はESPNで時系列を追って詳しく報道された。
また、韓国のホテルで大谷と水原がふたりきりで話した際に、水原は大谷に対して初めて「嘘をついていた」と打ち明けたと、大谷は会見で発言した。
つまり複数の人間が、水原が嘘をついたことを自分に認めたと、公に発言しているのだ。