MLBソウルシリーズ開幕戦第1戦の大谷翔平(左)と水原一平=2024年3月20日、韓国・ソウル(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

真実を語るメリット

 ただ、法的に見ると、記者や大谷やドジャース陣営に嘘をつくことは「連邦政府に嘘をつくこと」とは異なり、それ自体が即「犯罪」とは言えない。

 また、韓国のホテルでの大谷と水原のふたりだけの会話の録音記録が存在しないとしたら、大谷陣営はその会話の内容を捜査官にどう証明するのだろうか。

「もちろん記者やチームメイトに嘘をつくのは犯罪ではない。単に最悪な判断というだけ。だが、水原はこれだけ世間から注目されている大谷という存在について自分が何かを発言すれば、その一言一言が世界中の人々によって徹底的にチェックされるということを熟知している人間。そんな彼が公の場でまず最初に作り話を披露し、そしてそれを翻すこと自体、彼自身の利益になるわけがない。なぜ最初から真実を言わないのか。水原が嘘をついたことは、大谷も水原本人も結局それぞれが公に認めた結果となった。水原が公的な場でどんな発言をしてきたのかを捜査官は判断材料のひとつにして、それを使って水原が不利になる結果を導くことも可能だ。つまり水原は、現時点ですでにかなり不利な状態だ。だから裁判で争う可能性は少ないはず」

 水原に対してIRSや連邦検察が連絡を取っているならば、水原はすでに弁護士を雇っているはずでは、と見られている。

 しかし、賭博の借金を抱えていた彼に犯罪専門の弁護士を雇う資金があるとは想像しがたい。

「確かにそうだ」とナフタリス。弁護士費用が払えない場合は、国選弁護人が合衆国から水原に提供されることになるという。

 一方、大谷陣営が雇った弁護士事務所「バーク・ブレットラー」の顧客には、性的暴行訴訟で原告と和解した英王室のアンドリュー王子も名を連ねる。

 人身取引に関与したとして起訴され拘置所で死亡したジェフリー・エプスタインと親交があった王子を顧客に持つ弁護士を選択することに驚いた人も少なくない。しかしナフタリスは「彼は犯罪事件の弁護士として非常に有名。この種の事件で起こりうることを熟知しており、有名人のトラブルを解決することで知られている」と言う。

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