本拠地・ドジャースタジアムの会見場で記者会見を行う大谷翔平=2024年3月25日、米・カリフォルニア州ロサンゼルス(写真:AFP/アフロ)
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 ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平が元通訳の巨額窃盗疑惑をめぐって記者会見を行った。この会見を受け犯罪捜査と司法の現場を知る元米連邦検事補に、在米ジャーナリストが聞いた。AERA 2024年4月8日号より。

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「メディアからこれだけ注目されている大谷に、いま、公の場で嘘をつくメリットはひとつもない。彼が話したことを聞いて、腑に落ちた」

 米国時間3月25日の大谷翔平の記者会見を見終わった後、そう語ったのは米連邦政府の検事補としてニューヨーク州で11年間、NBAバスケ審判のギャンブル不正やさまざまな金融詐欺などの犯罪を追及し、ほぼ全てのケースを有罪判決に導いたジョシュア・ナフタリスだ。

 現在はホワイトカラー犯罪事件の刑事弁護人として働き、法廷で検察と対峙することもある。そんな犯罪捜査と司法の現場を知り尽くした彼が、ロサンゼルス・ドジャースのスター選手の大谷翔平と、10日前まで彼の通訳だった水原一平の怒濤のドラマをどう見たかを聞いてみた。

 会見で、大谷は70人以上の報道陣を前に「彼が僕の口座からお金を盗んで、なおかつ皆に嘘をついていた」と発言した。

 この会見によって焦点が大きくシフトしたとナフタリスは語る。「水原にとっては、違法賭博に手を出した問題は、もはや重大ではなく、窃盗だと名指しされたことのほうが、はるかに大きくて深刻だ」

懲役0年から20年!?

 違法賭博や経済犯罪を捜査する連邦政府機関で、警察と同じ逮捕権限を持つIRS(内国歳入庁)がすでに水原の捜査を開始したと発表している。

 もし会見での大谷の発言が全て事実だとすると、水原はどんな罪に問われるのだろうか?

「もちろん今後、大谷が語った発言が事実なのかどうかを捜査官は細かく調べ、テキストメッセージや電子メールなどの物的証拠も双方から集めて矛盾がないかを確認するわけだが、もし仮に大谷の銀行口座の450万ドル(約6億8千万円)を盗んだとして水原が立件されれば、ワイヤーフロードという罪に問われる。これはインターネットなどの電子通信によって金銭を盗む行為で、重罪のカテゴリーだ。法的には連邦政府の管轄だけど、州と連邦の両方で裁かれる可能性がある」

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