ボウヤーなぜ自由?
そもそも、水原は違法賭博を通してスポーツに賭けた疑惑が発端で、6億8千万円もの巨額の借金を抱え込んだわけだが、この違法賭博の元締との疑いで捜査されているマシュー・ボウヤーという人物は、なぜ現在に至るまで逮捕も起訴もされず、自由の身でいられるのだろうか。
昨年秋、ボウヤーの自宅が家宅捜査され、コンピューターなどが当局に押収されてから、すでにもう数カ月経っている。もし彼がもっと早く起訴されていれば、水原が借金苦の窮地に陥らなかった可能性もあるのでは。
「確かに、私も同じ気持ちだ。連邦検察は押収したデバイスやファイルから確たる証拠を見つけるべく調査続行中のはず。スポーツ賭博の組織はボウヤー個人に留まらず、他にもつながりがあると見られていて、全容の割り出しに時間が掛かっているとも言える。だが、大谷の銀行口座から彼の元に大金が送金されていた事実が今回これだけ注目された以上、検察側はこれから急ピッチで捜査を進めるはず」とナフタリスは言う。
だが、もしボウヤーが起訴されて有罪になったとしても刑務所で服役せずに済む場合もあるという。「違法賭博組織運営単体の罪だと、刑罰は非常に軽くて半年から1年の懲役刑がせいぜいだ。他の犯罪に手を染めていれば話は別だが」
異次元の信頼と口座
水原はESPNの記者に「家に誰か来るかもしれないのが怖い」と言ったが、借金の取り立て人が来ることを恐れていたのだろう。「違法賭博の運営者は、犯罪組織とつながっていることが実際に多い」とナフタリス。
だとすると、水原は恐怖に怯えながら賭け続け、大谷の口座の金に手を付けたのだろうか。そうだとしたらどうやって?
「水原がたとえば自分のコンピューターから大谷の銀行口座にアクセスできた可能性もある。大谷が口座番号や暗証番号を水原に教えた事実は果たして過去にあったのかなどを、捜査官は大谷本人に細かく聞くはず」
送金が1回ではなく、50万ドルずつ8~9回に分けて送金していたとすると「何度も繰り返す意図があった」と捜査員に判断されるとナフタリスは言う。