我々の宇宙もまた全体としては特別な方向がないと考えられている。これは宇宙原理と呼ばれ、現在の宇宙論の基礎となっている「宇宙には特別な場所も方向も存在しない」という主張である。
これは「原理」と呼ばれるだけあって、直接証明できるものではないが、少なくとも現在観測されている範囲ではこの主張と矛盾するものは何もない。その意味において、かなり信頼できる仮定であると言える。万が一、宇宙にある特定の方向性があるとすれば、物理学・宇宙論を根底から揺るがす大発見となる。
さらにこの考察は生物の形に対しても応用できる。例えば、水中をふらふら動いている毬藻は球形に近い。これは前後上下左右のあらゆる方向にほぼ区別がないためである。一方、水底にくっついているイソギンチャクにとって上下には明確な違いがある。したがってイソギンチャクは球形ではなく、前後左右にだけ区別のない軸対称に近い形をしている。これは基本的に陸上植物も同じである。
さらに、魚や動物となると、重力の向きで決まる上下に加えて、自分自身の運動のする向きに対応して前後という違いも生まれる。したがって、残るのは右と左の対称性しかない。というわけで、ほとんどの動物は左右対称なのである。