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 人間には右利きの人と左利きの人がいるが、なぜ右利きの方が多いのか。なぜ星は星形でなく丸いのか。このような疑問を前にしたとき、あなたならどう考えるだろう。物理学者の須藤靖氏は「対称性」をもとに考察するという。朝日新書『宇宙する頭脳 物理学者は世界をどう眺めているのか?』から一部を抜粋、再編集して解説する。

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世界は対称性であふれている

 天文学の例をとっても、理由がない限り、物事は対称であることが普通だ。太陽に代表される恒星、木星に代表されるガス惑星、さらには地球のような岩石惑星などは、いずれもかなりの精度で球という極めて対称性の高い形状をしている。

「なぜ星は星形でなく丸いのか。星が星形でなければ何をもって星形というべきなのか」という質問は、それなりに奥深い内容を持つのだが、その答えは「ある特定の方向が選ばれる理由がないから」ということに尽きる。

 天体は自らの重力によって安定な形状を保っているが、重力は中心からの距離の逆2乗に比例するだけで、その方向には依存しない。もし天体が球形からずれているとすれば、それこそ理由が必要なのである。

 例えば、地球は自転しているため、厳密に言えば南北方向と東西方向は平等ではない。このため地球は球ではなく、少しだけ歪んだ楕円体になっている(が、これは通常無視できる)。日本の探査機はやぶさが到着したリュウグウが球形でないことを覚えている方もいらっしゃるだろう。これは、重力以外の力が大切だからだ。

『宇宙する頭脳』(朝日新聞出版)
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宇宙には特別な場所も方向も存在しない