動かなかった断層が今

 しかも大地震リスクはこれだけではないと、長尾氏は指摘する。

 千葉県東方沖には、巨大地震の際に動かなかった断層、「割れ残り」が二つあるのだ。

 懸念されている一つが、2011年に東日本大震災を起こした断層の割れ残りだ。東日本大震災は、岩手県沖から茨城県沖にかけての日本海溝沿いが震源となったが、震源の南端にある千葉県東方沖の断層は動かず、割れ残りになったと考えられている。

 千葉県が2016年に発表した被害想定によると、この割れ残りが動いた場合、最大でM8.2の地震になるという。最大8.8メートルの津波が銚子市を襲い、建物の全壊は約2900棟、半壊が約6700棟。死者は最大約5600人も出ると想定されている。
 

 そしてもう一つの割れ残りが、1923年に関東大震災(M7.9)を起こした相模トラフにある。

 相模トラフは1703年にも元禄地震(M7.9〜8.2)を起こしている。元禄地震の震源域は関東大震災よりも広く、房総半島の東側にも及んでいたことがわかっている。裏を返せば、元禄地震では動いたが、関東大震災では動かなかった割れ残りが、房総半島にあるということだ。

 長尾氏はこう語る。

「M6.5もしくはM7程度の地震が起きると、割れ残りを刺激し、M8クラスの巨大地震を引き起こすことも考えられます。この地域では古い建物が残っていたり、ライフラインが老朽化していたりする。能登半島地震のように壊滅的な被害を受けるおそれもあります。また、房総沖の地震が首都直下地震に連鎖していくことも考えられる」

 巨大地震はいつ起きてもおかしくない。最悪のシナリオを想定し、今からできる準備をしておくべきだろう。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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