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 物理学といえば、アインシュタインの相対論があまりに有名だが、一般人からすれば難しく思えてしまうもの。だが、物理学者の須藤靖氏は、世の中には「一般に相対論で満ちあふれている」という。朝日新書『宇宙する頭脳 物理学者は世界をどう眺めているのか?』から一部を抜粋、再編集して解説する。

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 物理屋はアインシュタインの一般相対性理論をさして、一般相対論、あるいは単に相対論と呼ぶことが多い。専門家以外の一般の方々の場合、相対論と聞くとむしろ特殊相対論を思い浮かべるかもしれないが、特殊な人々は一般相対論を思い浮かべるというねじれた構図となっている。

 相対論は、物理法則を記述する方程式はどのような座標系を用いて書いても同じ形になることを保証するという一般相対性原理が出発点だ。

 こう聞くと何やら難しそうであるが、次のように言い換えてみるとどうだろう。

 物事の善悪、真偽、○×などあらゆる物事には絶対的な基準は存在せず、あくまでそれらを取りまく環境との相対的な関係によって決まるからこそ、人によって判断が異なるのだ、と。にわかに深い人生訓の様相を帯び、すっと腑に落ちてこないだろうか。

 今回はこの観点から、世の中は一般に相対論で満ちあふれているという私の日頃の主張を思いっきり展開してみたい。

『宇宙する頭脳』(朝日新聞出版)
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