※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 春の健康診断などの数値で気になることとして「尿酸値」をあげる人もいるだろう。歓送迎会やお花見でのアルコール摂取と暴飲暴食、気温の上昇とともに汗をかき血中の尿酸値は上がってくる……。そんな季節の前に「痛風」について、過去の記事を振り返る。(「AERA dot.」2023年3月2日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)

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サイレントキラー(静かな殺し屋)ともいわれる「生活習慣病」。寿命に影響する「病気」なのだと認知されるようになってきたが、実は高尿酸血症・痛風もその一つ。何がそんなに問題なのか、そして対処法を取り上げる。

 山王メディカルセンター院長でリウマチ・痛風・膠原病センター長の山中寿医師は、高尿酸血症・痛風を「元気だけど、健康ではない病気」と表す。この病気の難しさを端的に示している。

 高尿酸血症は、血液中の「尿酸」の値が7・0ミリグラム/dL以上になると診断される。自覚症状はほぼなく、日常生活に支障はないため、患者は「元気」。健診などで尿酸値が高いと指摘されても放置されがちだ。しかしからだは静かに少しずつむしばまれ、「不健康」になっていく。

 治療しないことによる問題でよく知られているのが痛風の発作だ。尿酸値が基準値(7・0ミリグラム/dL)を超えると尿酸は結晶になり、足の指の関節などに蓄積していく。この結晶がはがれて痛みが出ることを「痛風」という。発作を繰り返していると、いずれ関節そのものが変形してしまう。

 それだけでない。尿酸の結晶は血管を内側から傷めつけて、内臓にも影響を及ぼす。痛風発作後に心筋梗塞と脳卒中のリスクが高まるという海外の調査結果もある。

高尿酸血症が招くメタボリックドミノ

メタボリックドミノ
メタボリックドミノ

 高尿酸血症は、生活習慣病の一つ。その名のとおり「生活習慣の乱れ」が原因で発症することが多い。問題となる生活習慣は「飲みすぎ」だけでなく、実は「肥満」が大きな原因だ。

 そのため患者は尿酸値の異常だけでなく、内臓脂肪型の肥満、血圧や血糖値、中性脂肪値が高いなどの問題を複数抱える「メタボリック症候群」であることがしばしば。国立病院機構米子医療センター院長の久留一郎医師は、その問題点をこう説明する。

「メタボは『肥満』を発端とし、やがて『メタボリックドミノ』という状態に陥ります。高尿酸血症を発症しているということは、生活習慣の乱れ→肥満→『高尿酸血症』→他の生活習慣病の併発→動脈硬化という悪循環の中にいる状態。いずれ腎不全や心筋梗塞、脳卒中など命に関わる疾患に、まるでドミノ倒しのように次々見舞われる危険性があるのです。実際、高尿酸血症患者は、高血圧や糖尿病、脂質異常症を併発していることが多いです」

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全身に悪影響を及ぼす高尿酸血症