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 ヒロインに実在のモデルがいる朝ドラは多い。いてもいなくても面白ければそれでよいのだが、モデルがいる朝ドラには問題が一つ。何かというと、「成功したあとどうするか問題」だ。

【写真】8歳の反抗期。スズ子VS愛子「マミーなんか、大嫌いや」

 「ブギウギ」のヒロイン・スズ子(趣里)は、笠置シヅ子という「戦後の日本を明るく照らしたブギの女王」がモデルだ。昭和に生まれた視聴者なら大抵、「東京ブギウギ」のあとに「買物ブギー」を大ヒットさせたあの人よね、とわかって見る。

 3月1日の放送で、スズ子が「買物ブギー」を披露した。2代目マネージャーの柴本(三浦りょう太)はかなりポンコツだったが、その舞台を見て目が覚める。受け身のヒロインだったスズ子が、「教える」立場になった。ここからスズ子の「成功後」が描かれる、その合図のようだった。

 案の定、そこから「スズ子と愛子の対立」が主たるテーマになった。案の定と書いたのは、これが実在のモデルがいる朝ドラの「成功したあとあるある」だからだ。

 例えば幕末生まれの実業家・広岡浅子をモデルにした「あさが来た」、子ども服「ファミリア」の創設者・坂野惇子をモデルにした「べっぴんさん」。母に反発する娘は、前者が千代(小芝風花)で後者がさくら(井頭愛海)。反発の程度、尺の取り方は「千代<さくら」だったが、面白くないという意味においては「千代=さくら」だった。だって、しょせんは苦労知らずのお嬢さまの青春の一コマ。「ふーん」でしかない。

 というわけで、3月に入り「ブギウギ、おまえもか」な「スズ子vs愛子」になった。肯定的に見れば、愛子とスズ子の根底にある寂しさが描かれていた、となるだろう。だけどやはり面白いとは言い難く、「成功したあとどうするか問題」をしみじみかみしめた。

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8歳の反抗期は朝ドラ史上、群を抜いて若い