愛子が母に反発した年齢は、歴代朝ドラで群を抜いて若い。っていうか、8歳だ。その前にまずは、もっと幼少期の2人の関係が描かれた。スズ子にアメリカ公演という話が持ち上がる。ホノルル経由で本土にも渡り、4カ月ほどになるという。歌手としては行きたい。母親としては行き難い。葛藤するが、行くという結論を出す。「お見送りショー」で喝采を浴びるスズ子の姿を見ても、愛子はすねまくり。出発当日も「マミー、嫌だー」と泣いて離れない。
父親の不在、はあるはずだ。だが、そこを明確にする描き方にはなっていない。強調し過ぎれば、ひとり親家庭の否定になってしまう。そのことへの配慮かな、とも思う。有能な家政婦さんを得て、愛子は楽しく育っているように見える。だからスズ子のアメリカ行きを決めた勇気が立ち上がってこない。愛子がすごく甘えん坊になっている、その心情も伝わりにくい。スズ子と愛子、どちらにも心を寄せにくい展開になったと思う。
スズ子の父(柳葉敏郎)の死、生みの母(中越典子)との再会という話をはさみ、8歳になった愛子が登場した。自分の誕生日パーティーが盛大に催されているのに、ずっと不機嫌そうだ。そしてこのパーティーが、愛子誘拐をほのめかす脅迫事件へとつながる。やって来た刑事・高橋は内藤剛志さんだが、捜査一課長ではないようで「必ず、ホシを、あげる」とは言わない。
と、そういうお楽しみは否定しないけれど、甘えん坊から不機嫌さんになった、愛子の変化がよくわからない。スズ子の忙しさゆえの寂しさが、次第に反発になったのだろうとは思う。スズ子はスズ子で父も亡くし、家族は愛子だけだ。だから忙しさを豪華なパーティーで埋め合わせたりするのだろう。それが愛子には、ますます鬱陶しい。そんなふうに想像はできる。が、ちょいとばかり視聴者の想像に頼りすぎではないだろうか。
芸能人が自宅を解放するなんて今では考えられないけれど、時代が違うからなー。そもそもスズ子はオープンマインドな人で、その感じが愛子にはカチンとくるのかなー。いろいろ思うが、なぜ「マミーなんか大嫌いや」と叫ぶほどの嫌悪感に至るのか。愛子の心情がつかめない。