自習室ではなく、廊下に置かれたテーブルで自由に学ぶ生徒たち(撮影/編集部・福井しほ)

 何か新しいことを取り入れるときは、「それ、おもろいん?」という言葉が飛び交う。フィールドワークでも、みんなで一つのバスに乗って行くのではつまらないと、七つの行き先から選べるようにした。自分で行きたいところに行くほうが「面白いから」だ。

 その面白がる精神が、進路にもつながっているのだろうか。

「評価を大学の合格者数とするなら、去年初めて京大が40人を超えました。その内現役では33人が合格した。やっぱり、現役で30を超えるのは一つの『夢』ですよね」

 京大の推薦入試にあたる特色入試では、今年、同大最多となる8人の生徒が合格している。一般入試でも、多くの生徒が現役合格を狙っている。

「数字が目的ではないし、京大がすべてでもない」として、岩佐さんはこう続ける。

「難関に挑戦しようと思う子が増えているということの裏返しでもあって。タフな子になってほしいと思っているので、それがうれしい」

 高2秋の「受験生宣言」では、志望大学ではなく学部ごとに集まり、その学部に行きたい理由を話し合う。他の人の考えを知ることで、自分のことを深く掘り下げられるという。

2023年4月に高3生が書いた横断幕。受験に向けての決意が綴られている(撮影/編集部・福井しほ)

「苦労」するから楽しい

 校名が変わって20年。脈々と続く「風土」があると岩佐さんは胸を張る。

「難しいことをやって合格させようと意気込むのもいいことですが、先輩を見て、自分も頑張ろうと小さな目標を重ねていく校風が生まれています。そこには必ず不合格の生徒もいますよ。もう一度チャレンジする子もいれば、他の大学で自分のやりたいことを追求したい子もいる。その力強さ、タフさがいいんじゃないかと思うんです」

 タフさは一日、二日で身につくものではない。だからこそ、改革をしながら、時間をかけて育てていく。

〈めっちゃ大変、めっちゃ頑張ってる、だからめっちゃ楽しい!〉

 一見ゆるいこのフレーズは、西京の生徒から生まれた「合言葉」だという。

「きれいに舗装された道だけを歩いても、楽しいんかなと思うんです。『困り』がある子は助けます。でも、楽しいと感じるのは、何か大変なことをやり遂げたとき。生きてると当然苦労することはあるから、それを大人が排除するのはよくない」

 面白がる、そしてハードなことに挑戦する校風こそ、志望校への道につながっている。

岩佐峰之校長(撮影/編集部・福井しほ)

(編集部・福井しほ)

※AERA 2024年3月18日号から。合格者数はサンデー毎日、大学通信の共同調査を基にした速報値。西京高校の合格者数は3月13日18時時点

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