大学時代の吉田いづみさん。友人とともに、外科手技の授業に臨んだ(写真:本人提供)

日本の病院を選ばなかった理由

 実は、ハンガリーの医学部の入試の難易度は、日本と比べると高くない。数学は必要なく、予備コース履修者であれば合格率は9割以上だ。しかしその分、医学部に入ってからの勉強は非常にハード。吉田さんは、入学したセンメルワイス大学で過ごした日々を思い返し、「もう二度と経験したくないですね」と苦笑する。

 日本人学生が特に苦しむのが、「口頭試問」だという。「この病気について知っていることをすべて教えてください」というように、与えられたテーマについて教授に20分程度話すのだが、膨大な試験範囲の中から、何を聞かれても要点を押さえて説明できる知識量がないと太刀打ちできない。

「定期試験に合格しないと、その科目に関連する授業は履修できないので、6年でストレートに卒業できる人は学生全体の1/3、6年以上かかって卒業する人が1/3、途中で挫折して退学する人が1/3というイメージです」(吉田さん)

 吉田さんは2年生の終わりに消化器系の難病を患い、途中1年間休学したものの、予備コース含めて8年かけてハンガリーの医師免許を取得し、無事卒業。EU加盟国同士は免許を互換できるため、22年からはドイツの病院で皮膚科医のキャリアをスタートした。

 日本の病院を選ばなかった理由について、吉田さんはこう語る。

「病院によっては、1年間で休みが5日だけで、毎日深夜11時12時まで働くような環境なので、自分はとても働けないなと……。労働者の権利が重視されるヨーロッパから見ると、日本は異常です。ドイツでは、週2日の休日と年間30日の有給休暇が保障されていて、勤務時間は朝8時~夕方4時半まで。残業しても30分程度で、職場環境には満足しています」

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