日本の医学部と知識面の差はない
また、日本では1~2年目の初期研修医の年収は450~600万円ほどだが、ドイツでは一般的に1000万円前後だといい、金銭面でもはるかに恵まれている。
とはいえ、吉田さんのように海外の病院に勤める卒業生も一定数いる一方で、圧倒的に多いのは帰国して日本の病院で医師になる人だ。
17年に吉田さんと同じセンメルワイス大学を卒業した双子の医師、末益将仁さんと貴仁さん(32)は現在、兄の将仁さんが聖路加国際病院の腫瘍内科で、弟の貴仁さんが立川綜合病院の消化器外科で勤務している。
海外の医師免許を持っていたとしても、日本での医療活動には制限があり、日本の医師国家試験を受けて免許を取得する必要がある。
「ハンガリーでの試験勉強の記憶が鮮明なうちに、日本の国家試験を受けておこうと思いました」
こう話す将仁さんと貴仁さんは、大学卒業後わずか半年間で、英語で学んだ医学の知識を日本語で覚え直し、無事に日本の試験にも合格した。日本の医学部で学んだ医師たちと知識面で差を感じたことはないという。
また、日本で後ろ盾となる学閥もないが、デメリットを感じる場面は特にはない。むしろ、外国人の患者が来院した時や英語の文献にあたる時など、留学経験に助けられることが多いそうだ。
「がんの化学療法はアメリカが一番進んでいるので、ゆくゆくは渡米して現地の病院で臨床の経験を積みたい。次はアメリカの医師国家試験用の勉強を始める予定です」(将仁さん)