「山登り型」と「ジャングル探索型」

 倉部氏は、大学や社会が求める人材を「プレイヤー候補生」と例える。その真意はこうだ。

「基礎学力の勉強は、いわば頭の筋トレ。これを満遍なく良く鍛えることも大事なことではありますが、中には筋肉をつけること自体が目的になり、その使い方や目的を見失っているケースもありますね。そうではなく、必要な頭の筋トレはしつつ、自分がどのフィールドで何を武器にしてどんな勝負をしていくのかを自分で考える、プレイヤーとしての学び方が大切。それを考えられる生徒は大学に進学してから伸びます」

 基礎学力に加えて、プレイヤーになるためには意欲や資質、そして進学する学部や大学との相性も大事だという。必要なのは「私はどう成長したいか。私にとって大切な要素は何か」という自分のモノサシだ。大学もそれぞれが掲げる教育方針をモノサシにして、受験生を測る。ならば高校生も自分のモノサシで、大学の価値をはかることが重要だ。

 倉部氏は大学の学びを「山登り型」と「ジャングル探索型」に例える。前者は目指すゴールが明確に決まっている学部や学科などを指す。医療系、保育系などはその典型例だ。国家資格取得に向けたカリキュラムが組まれており、卒業生の大半が実際にその職に就く。

 それに対して後者は、全員共通のゴールが存在しない学部・学科を指す。授業選択の自由度は高く、興味関心に合わせて寄り道しても、特定領域に深く入っていっても良い。専門知識の習得だけでなく、考え方の幅や価値観を広げることも重視される。

「高校の先生から『将来やりたいことを決められない生徒が増えた』と愚痴をこぼされることがあるのですが、よくよく聞いてみると『将来の仕事が決められないので進路を選べない』と語る生徒も実は多い。そんなに狭く考えなくてもいいのではないかと思います。法学部の学生がみな弁護士や裁判官を目指しているわけではありませんし、卒業後の進路も実際には様々。世の中の正義や公平について興味があるから、というのもりっぱな進学動機です」

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