甘シャリ、づけ盛り、物相(もっそう)――。どういう意味かおわかりになろうか? これらは刑務所などで使われてきた俗語、隠語だ。小泉龍司法相は2月22日の記者会見で「刑事施設における組織風土の改革」として、刑務所などで刑務官らが使っている刑務所用語を廃止すると発表した。2025年6月から、受刑者の立ち直りに重点を置く「拘禁刑」が導入されるため、一般社会で使わないような言葉はなくすのが狙いだ。
【表】「うさぎ」「ケツ割り」「シャリ上げ」……刑務所の隠語35はこちら
廃止される隠語は全部で35(一覧表参照)。小泉法相は会見で、
「人間の心や精神は言葉とつながっています。言葉がゆがんでいれば、考え方、気持ちもゆがんでいき、そこから虐待的な行動というものが誘発されかねない」
と廃止の理由を説明した。
4月1日から全国で「さんづけ」
2021年から22年にかけて名古屋刑務所では刑務官が受刑者に暴行するなどして、特別公務員暴行陵虐などの疑いで13人が書類送検された。全員が不起訴処分(起訴猶予)となったが、法務省は矯正施設での対応を見直し、名古屋刑務所では刑務官が受刑者を「さん」づけで呼ぶことにしたという。全国の刑務所では今年4月1日から実施する。
小泉法相は「職員から肯定的に受け止められている」と話すが、現場では異論もあるようだ。
元幹部刑務官で、著作も多数ある作家の坂本敏夫氏は、
「ニュースで『ガラ』『ガリ』を使うのはダメと知りました。刑務所で『ガラ』というのはあまり使いません。名前か個人に割り当てた番号で呼びます。『ガラ』は警察の俗語でしょう。『物相』もかなり古い時代のもので、今は食器としか呼びません。刑務官や受刑者からも手紙がきたり、連絡をとったりしますが、そこにも普通に刑務所用語が書かれています。特に問題とは思いませんがね」
と話す。