前出の坂本氏はその点をとらえて、

「例えば徳島、本などの刑務所はLBで、殺人罪で無期懲役といった受刑者が多くいます。そこで『〇〇さん』と呼んでいたらなめられてしまい、刑務所の本来の使命、矯正になりません。それに被害者の視点で見れば、悪いことをした受刑者がさんづけでお客さんのように呼ばれていれば、どう感じるでしょうか。受刑者が刑務官のことを『牢番』『税金泥棒』とかひどい言葉でののしることは珍しくありません。『〇〇さんおやめください』では対応できません」

 と話し、こう指摘する。

「受刑者の犯罪傾向で刑務所の役割は違ってきます。刑務所、拘置所も基本は所長をトップにした独自の自治です。所長がどう対応するのか決めればいい。隠語や、さんづけについてまで、法務大臣が記者会見するというのは違和感を覚えます。私がいた時から、法務省は刑務所や拘置所の詳細を隠す傾向にある。メディアにオープンにして刑務所や拘置所の実情を知ってもらい、論議すればいいと思う」

地方によって異なる隠語も

 法務省矯正局の担当者は、

「35の刑務所用語、隠語をやめるように通達して1カ月ほどですので、まだ刑務所や拘置所からの反応はきていません。地方によっても独特の用語、隠語があるようです。35で終わるのではなく、必要に応じて廃止する通達をするかもしれません。また刑務所や拘置所ごとに、使わないようにと指示を出すこともあるでしょう」

 としている。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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