約1年前に『あちこちオードリー』(テレビ東京)に出たとき、Creepy Nutsはバラエティ番組に出始めた時期だった。DJ 松永は、気心の知れたオードリーを前にしてテレビの仕事への不平不満をぶちまけた。そんな彼に対してオードリーの若林正恭は「テレビの仕事増えちゃうぞ」と言った。それから1年、若林の言葉通り、彼らのテレビ出演は大幅に増えていった。

 レギュラー番組を獲得しただけでなく、ゲストとしてバラエティ番組に呼ばれる機会も激増。さらに、『情熱大陸』(MBS・TBS系)に取り上げられたり、R-指定が『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)に出演したり、テレビのさまざまな分野に進出していった。

 DJ 松永がテレビで話しているのを聞くと、良くも悪くも「普通だな」と思う。そこら辺を歩いている普通の内気な青年が、いきなりテレビに引っ張り出されたときに思うようなことを率直に語っている。それがドキュメンタリーとして新鮮で面白い。

 テレビというのは、徹頭徹尾作り物でありながら、そこに生々しさも求められるところがある。テレビのフレーム内に映るすべてのものは、制作者の意図によって作り込まれたものであり、出演者も制作の意図に従って動く操り人形のようなものだ。しかし、出演者が話す内容や出演者の存在感そのものには生っぽさがないと面白くならない。

 テレビタレントとして生きると決めているプロの立ち振る舞いは、どうしても一定の枠の中に収まったものになりがちだ。だからこそ、テレビは常に外部に新しい才能を求める。学者、ミュージシャン、アーティスト、モデルなど、別の分野の専門家がテレビの空間に引っ張り出されてくる。そして、テレビ的ではない生のリアクションをする。それが予定調和を崩してテレビを面白くしてくれる。

 誤解を恐れずに言えば、Creepy Nutsがいま座っている場所は、一昔前に蛭子能収が座っていた場所と同じだ。DJ 松永にはこれからも「若蛭子」として、飾らない物言いで視聴者を楽しませてほしい。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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