とくだ・けんし/1997年12月9日生まれ。26歳。山口県周南市出身。2009年、小学生名人戦全国大会優勝。同志社大学卒。22年、四段。山口県出身者としては初の将棋の棋士に(撮影/写真映像部・東川哲也)

 当時の山口県には後に奨励会に進んだりアマ強豪になる子が何人もいた。子どもたちが育っていく土壌があった?

「そうですね。松本さんや北村さんたちのおかげです」

 08年。徳田は大人たちを連破して、史上最年少10歳で、山口県アマ名人位への挑戦権を獲得。三番勝負で師匠の北村名人に挑んだ。

「惨敗した記憶はあるんですけど(笑)」

 結果は2連敗。しかし2局目は「簡単に土俵を割るな」という師匠の教えを守り、200手を超える熱戦になった。

「その教えは、確かに身についてるかもしれません。いまでもよくクソ粘りをするんです(苦笑)」

 09年。新6年の徳田は、ついに目標だった小学生名人戦全国優勝を果たした。

「この年は東京・将棋会館の特別対局室で、使ったのは黄楊の盛上駒。解説は羽生先生(善治現九段)で、聞き手は里見さん(現福間香奈女流五冠)。これ以上はないだろうという環境で指させてもらいました。決勝はその当時の自分の実力よりはるかに上の力が出ました。羽生先生に『いい将棋だね』みたいに褒めてもらったのを覚えています」

 同じ年、徳田は山口県内の主要な大会である防府天満宮杯で勝ち進み、決勝で北村さんを破って優勝した。

「確か北村さんに初めて勝って、嬉しかったのを覚えていますね。北村さんは悔しさ半分、うれしさ半分みたいな感じだったと思います」

 地元の人々の期待を一身に背負い、徳田少年は棋士への道を歩み始めた。(構成/ライター・松本博文)

AERA 2024年3月11日号

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