29日午後、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)に岸田文雄首相らが出席。現職首相が政倫審に出席するのは初めてで、報道関係者の傍聴やテレビ、インターネット中継を認める全面公開されたことも話題だ。自民党への信頼回復は果たされるのか? 過去の記事を振り返る。(「AERA dot.」2024年1月21日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)
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安倍派「5人衆」の立件は断念――。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で1月19日、安倍派の大野泰正参院議員や谷川弥一衆院議員、派閥の会計責任者らが在宅や略式で起訴されたと報じられた。池田佳隆衆院議員に続く国会議員の立件だ。ただ、東京地検特捜部は安倍派幹部については困難と判断し、一連の捜査は一段落したと見られている。こうした動きについて、東京地検特捜部元副部長の若狭勝弁護士は「国民からの批判は免れない」との評価だ。
政治資金パーティーをめぐる問題では、公訴時効にかからない一昨年までの5年間で、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が計6億円超、志帥会(二階派)では計2億円超に上る裏金があったことが明らかになった。そして、岸田文雄首相が長く会長を務めてきた「宏池政策研究会」(岸田派)も約3千万円の収支を政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている。
会計責任者との共謀を立証できない
派閥の会計責任者はいずれも特捜部の調べに対し、不記載の関与を認めているようだ。また、特捜部は会計責任者と共謀した疑いで、国会議員への取り調べも進めていた。安倍派幹部「5人衆」の西村康稔前経済産業相、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、世耕弘成前参院幹事長、萩生田光一前政調会長も昨年末までに特捜部の事情聴取を受けているという。
ところが、捜査のメスは幹部へ食い込むことなく、特捜部は19日に一連の刑事処分を出し、捜査は区切りを迎えた。幹部らの主体的な関与を示す十分な客観証拠もなく、会計責任者との共謀は問えないと判断したとみられる。
永田町の関係者によれば、安倍派はこれまで、二十数年にわたり裏金作りを行ってきたという。派閥会長でみると、森喜朗元首相が務めていた2000年前後から始まっていたとされている。
検察関係者は「安倍晋三元首相が『あの仕組みはやめるべきだ』と語ってから、裏金作りは一時中断になったが、その後、システムは復活した。そのときに、会計責任者と幹部が打ち合わせをして、幹部から指示などのアクションがあったのではないかとみて捜査を続けていた」と語る。