宇賀なつみさん(撮影/写真映像部・上田泰世)

特別な人じゃなくて、普通の人

 そんな煮え切らない思いを抱えながら、2018年、宇賀さんは旅行でベトナムのハノイを訪れた。その旅で、宇賀さんはフリーになることを決心できたのだという。

「大人が子どもみたいにじゃれあって遊んでいたり、昼間から道路で寝ている人がいたり、その現地の“ゆるい”空気感というか、それを目の当たりにしたときに、『私もそろそろ、自分の生き方や働き方を変えてもいいのかな』って感じたんです。忙しい日常から離れたときに、初めて自分の心の声を聞けた気がして。このままでいいのかなって思いながら会社の中に居続けるよりは、一歩外に出たほうが自分のためにも周りのためにもなるんじゃないかなって思ったんです」

 一般的に、テレビ局のアナウンサーがフリーになる場合、芸能事務所に所属することが多い。しかし、宇賀さんはどこにも所属せず、経理やスケジュール管理、スタイリストの手配など、すべてを自分一人でこなす、「完全フリーランス」として働いている。いまのような働き方を選択した理由は「芸能人になりたいわけではなかったから」だという。

「今もテレビに出ていますし、芸能人じゃんって言われちゃうかもしれないんですけど、周りの人からどう見えているかではなくて、自分の心構えの問題なんです。出役としての仕事を全体の3割くらいにするのが、私にとっては心地いい。出役ばかりになってしまうと、もっと目立たなきゃとか売れなきゃということばかり考えてしまうので、そうすると私の場合、苦しくなるんだろうなと思って。自分の気持ちが二の次になってしまうと感じたんです。たとえば、マネージャー業務や経理、庶務とか、出役以外の7割の仕事があることで、総合的に『一生活者』『一労働者』でいられるというか。特別な人じゃなくて、普通の人なんだよって自分に言い聞かせられる気がするんです。今も電車やバスで移動しますし、自分でアポを取って取材するということは、ずっと続けていきたいですね」

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「お金の面はあまり気にしていなかった」