もう一度言う。持っている自己ベストでいえば、日本では誰も瀬戸に敵わないし、世界でのメダルは確実だ。だが、それだけで勝負が決まらないのは、前評判を覆し続けてきた瀬戸が最も良く知っている。だからこそ、瀬戸にとってはこの3月の国際大会代表選手選考会こそ、まさに水泳人生における正念場とも言えるだろう。

【200m、400m個人メドレー両種目で自己記録に迫っておきたい】

 瀬戸は昨年の世界水泳選手権福岡2023が終わったあと、オーストラリアの名将、マイケル・ボール氏に師事。ボールコーチは女子背泳ぎの世界記録保持者であるカイリー・マッキーオンや、東京五輪では女子の短距離種目で無類の強さを見せたエマ・マキーオンらのコーチである。さらに古くは北京五輪の個人メドレーを制したステファニー・ライスも指導していた。

「フィーリングもすごく良くて、自分が思ったような練習ができています」

 そして、瀬戸はこう続ける。

「あとは、自分次第なので」

 水泳をはじめたときからの夢である、五輪の頂点。大きな忘れ物があるからこそ、30歳になる今に至るまで、新しい環境に身を置きながらチャレンジし続けている。

 五輪の借りは、五輪でしか返せない。

 瀬戸の目標は、あくまで五輪の頂点である。そのためにやるべきことは、分かっている。

「水泳人生で最高記録を超えたい」

 2024年8月に、そのチャレンジを達成しなければ、メダルはない。3月の国際大会代表選手選考会で、その足がかりが掴めるか。記録的に言えば、200mでは1分56秒台、400mでは遅くても4分07秒台、できれば4分06秒台まで持っていきたいところ。果たして、実現できるかどうか。

 瀬戸の水泳人生を懸けた“挑戦”は、最終章を迎える。(文・田坂友暁)

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