2016年のリオデジャネイロ五輪では、ライバルである萩野公介に金メダルを奪われ、銀メダルはアメリカのチェイス・ケイリッシュに持っていかれ、銅メダルに。

 そして2021年東京五輪は、いわずもがな。苦しい戦いを強いられ、400m個人メドレーでは予選落ち、200m個人メドレーは銅メダルまであと100分の5秒の4位という結果となった。

 悔しいほど、五輪では思うような泳ぎができていないのが、瀬戸という男なのだ。

 だからこそ、瀬戸は今もなお、五輪という選手たちにとっては世界最高峰の大会での頂点にチャレンジし続けている所以である。

 だが、その夢を実現する可能性が年々低くなっていることも、事実として捉えなくてはならない。

【世界でも国内でも若手が台頭、油断すると足をすくわれかねない】

 気づけば、世界の状況も、日本の状況も大きく変化してきた。

 アメリカでは22歳の若手、カーソン・フォスターが台頭。ニュージーランドの24歳ルイス・クレアバート、そして新たな世界王者となり、マイケル・フェルプスの世界記録を破ったフランスの新星、レオン・マルシャンら若手が世界を席巻し始めている。200mに至っては、アルベルト・ラツェッティ(イタリア)やカナダのフィンレー・ノックス、イギリスのダンカン・スコットも加わり、2020年から個人メドレーの自己ベストを更新できていない瀬戸の立ち位置は厳しくなるばかりだ。

 では、日本でも盤石かというと、実はそうでもない。

 200mでは、20歳の小方颯(イトマン港北/日本大学)に、高校3年生の松下知之(スウィン宇都宮/宇都宮南高)、寺門弦輝(セントラルスポーツ)らが記録を伸ばしてきている。特に小方は打倒瀬戸の急先鋒である。

 400mでも自己ベストからすれば瀬戸がナンバーワンだが、先に挙げた小方や松下に田渕海斗(NECGSC溝の口/明治大学)に、バタフライで金を狙う本多灯(イトマン東京/日本大学)も400m個人メドレーで代表権を狙っている。また、山口哩駈(桃山学院)や西川我咲(豊川高校)ら伸び盛りの高校生たちもいる。

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「水泳人生で最高記録を超えたい」