AERA 2024年3月4日号より

 先のアンケートでもTOEICL&Rスコアを採用や昇進の基準にしたり、考慮したりしているとした企業が少なくなかった。京セラでは従業員に「英語の会議に参加して意見が述べられるレベル」を求め、事務系で600点以上を採用基準とする。また、大手総合商社のひとつは、課長相当職への昇進に730点以上を課しているとした。

 さらに高いハードルを設ける企業もある。楽天は新卒採用基準に入社までの800点取得を定め、中途採用でもクリアすることを求める。同社は、

「円滑な情報共有、最新情報をスピーディーにつかむこと、世界中の人材が集まり競争力のある組織にしていくことを目指して『社内公用語英語化』をスタートしています。読み書きや社員間の会話、ミーティングに問題なく対応できる英語力を身に付けてほしいと考えています」

 という。

英語力の底上げになる

 TOEICの国内実施団体である国際ビジネスコミュニケーション協会によると、2022年度に団体受験制度を利用した企業・団体・学校は計約2900。永井聡一郎執行理事は言う。

「人事戦略・人材育成の一環としてTOEIC Programをお使いいただいています。2016年にはチャットでのコミュニケーションや対多数とのやり取りを取り入れるなど、構成を一部変更しました。常に時代の変化をテストに反映し、最新の英語を採用しています」

 前出の大橋教授はTOEICについて、社員を評価する企業にも、英語を学ぶビジネスパーソンにもメリットがあると話す。

「基準内なら一律に合格となる資格試験と異なり、TOEICはスコアでその人の英語力をある程度正確に測定できます。学習者にとっても、単語やフレーズ、文法は実生活やビジネスに使える標準的なもので、英語力の底上げに役立つでしょう」

(編集部・川口穣、伏見美雪)

AERA 2024年3月4日号より抜粋