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 いまや英語力が求められるのは、海外とのやり取りや駐在を伴う企業・部署に限らない。採用や昇格、昇進で英語力を重視する傾向が強まっている。AERA 2024年3月4日号より。

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 英語力がビジネスパーソンの必須スキルのひとつと言われるようになり、久しい。大手食品メーカー勤務の男性はこう話す。

「数年前から『基本的な英会話はできて当然』という雰囲気が強くなっています。私の部署では英語を使うことはありませんが、英語学習に補助が出たり、英語ができる社員が高く評価されたりするようになりました」

 いまや、英語力が求められるのは海外とのやり取りや駐在を伴う企業・部署に限らないという。そして、新卒採用時だけでなく、昇格・昇進のために英語力の基準が定められるケースも多い。AERAでは上場企業上位100社など計150社を対象に、社員にどの程度の英語力を求めるか、採用や昇進の際に英語力を考慮するかなどを問うアンケートを実施した。具体的なレベルの明示は避ける企業が少なくなかったものの、多数の企業で英語力を重視する実態が浮かび上がった。

 経営学部生らにビジネス分野の英語指導を行う産業能率大学の大橋眞紀子教授(英語教育)は、英語がより重視されるようになった背景をこう説明する。

「人口減少社会に突入し、今まで以上に海外に目を向けなければならない時代になっています。国内経済が好調なときと比べて英語でコミュニケーションする力が求められるのは必然で、その傾向はさらに強まるでしょう」

TOEIC600点が一つの目安に

 英語力を測る指標として多くの企業が参照するのが国際コミュニケーション英語能力テスト(TOEIC Program)だ。主に日常生活とビジネスの場面を対象とし、Listening&Reading Test(L&R)、Speaking&Writing Tests(S&W)などがある。代表的なL&Rでは、990点満点で英語力がスコア化される。おおむね600点台で履歴書でのアピールポイントになり得るとされ、800点台なら外資系企業や商社でも仕事に生かせるレベルと解説されることが多い。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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