ただ、相手が規模が小さい番組制作会社のときは、

「原作使用料といった部分だけ決めて、正式な契約を結ぶ前に、クランクイン(撮影開始)からクランクアップ(撮影終了)までしてしまう例もあります」(Aさん)

 こうしたこともアメリカでは起こりえないわけだ。

「原作いじらないとダメ」と制作側

 一方、制作側も現場の事情について説明する。

 大手キー局でドラマの映像監督を務める40代男性は、

「映像化する際にはどうしても原作をいじる必要があるし、ある程度を映像のプロに任せてしまったほうがいい」

 と言い切る。その理由は、

「漫画のコマで面白いものと、映像で面白いものは全く異なるから」

 だという。

 ギャグ漫画の実写化の場合には、特にそのケースが多いという。

「キャラクターがそのまま3次元化するわけではないのです。そこは演じるキャストが持つ能力の勝負となります。キャスト本来の面白さを使わざるを得ない」

 キャストの能力を加味したうえで、原作を多少変更することが必要だと指摘した。

 また、こんなケースもあるという。

「例えば、1千人の軍隊が押し寄せてきた場面を表現するとき、漫画のコマでは1シーンで終わるものの、映像では5分かけることもある。尺を長くしたり短くしたりすることで、感情の盛り上がりを操作する技術が、少なくとも我々には備わっている」

 とはいえ、「原作のキャラクターの個性などを変えるまでは、絶対しない」とも言う。

「原作者の意向は絶対に無視できない。作品を生み出してくれた人へのリスペクトは絶対あるから。だから、出版社を通して、原作者に台本チェックを必ずする」と付け加えた。

 この映像監督によると、脚本家が台本を作り上げたあと、出版社を通して必ず原作者の台本チェックが入る。原作者の修正を受け、台本の決定稿が完成する。決定稿が完成するまでには半年、撮影スケジュールに余裕がないときは1~2週間の場合もあると話す。最終回に近づくにつれ、台本のチェックスケジュールが早まることがほとんどだという。

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小学館と日テレ