芦原妃名子さんの『セクシー田中さん』(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 小学館の雑誌に掲載された人気漫画「セクシー田中さん」の作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなったことをめぐり、ドラマ制作側の日本テレビは2月26日の記者会見で、社内に設置した特別調査チームの調査を始めたと公表した。そして、ドラマ化の際に原作を改変することについての詳細な取り決めは、版元の小学館と契約書を交わしていなかったという。こうした対応は一般的だというが、映画化などが盛んなアメリカの契約事情はどうなのだろうか?

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「『セクシー田中さん』のような騒動は、アメリカではほぼ起こらないです」

 そう話すのは、都内の出版社でライツ業務を担当する男性Aさん(40代)だ。ライツ業務は、原作を映像化・商品化するときの窓口業務を担い、契約交渉や著作物の複製、販売についての権利の管理を担う。Aさんは、ライツ業務で5年以上の経験があり、海外との交渉もしてきたという。

「原作と違うのが当たり前」がアメリカ

 Aさんによると、原作を映像化する際、日本とアメリカでは決定的に違う点があるという。

「アメリカの場合、『原作とは別物、変わるのが当たり前』というのがまず前提にあります」

 その上で、原作側と制作側が契約内容を詳細にわたって詰める。日本では、たとえばドラマ化や映画化などの一次利用の契約がまずあり、その作品が売れるなどして、その後に二次利用(配信、海外展開、DVD、商品など)をどうするか、といった運びになる。しかし、アメリカは、映画、ドラマシリーズ、舞台など、どういう形で出して、さらにはゲーム化やグッズなどの商品化をどうするかなど、あらゆることを最初の契約で決めてしまうという。

 契約社会と言われるアメリカらしい一面だが、だからこそ、後から何かを言うことはないし、トラブルにもなりにくい。

 その分、契約交渉には時間をかけ、徹底的に詰める。そこで譲歩することなく、原作側も制作側もそれぞれの希望を突き合わせ、着地点を見つけるのだという。どこまで相手の希望をのむのか、金額で有利に進めるにはどれくらいの譲歩が可能かなど、交渉にすべてがかかっているわけだ。

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日本は役者のアドリブを想定