切り離された自分の首を抱えている堕姫と、それをなだめるために、目の前にいる鬼殺隊を殺すという妓夫太郎。異様な光景であるはずなのだが、彼らのしぐさがあまりにも「子ども」のようで、人間の幼い兄妹を見ているかのような錯覚におちいる。

幼女のように泣く禰豆子

 遊郭編では、めずらしく禰豆子が大声で泣く場面もある。炭治郎が堕姫に傷つけられた怒りで、我を忘れて凶暴化し、人間を襲いかけてしまう。しかし、兄が歌ってくれた「母との思い出の子守唄」を聞いて、なんとか人間の心を取り戻した。

<わーーーん わあぁ>(禰豆子/10巻・85話「大泣き」)

 禰豆子がこんなにも大声で泣いたのは、母が恋しい、甘えたい、という幼少期の気持ちを思い出したからだ。鬼になる前の禰豆子は、忍耐強く、弟妹思いであったが、普段は兄の炭治郎の前でも「しっかり者」であろうとしていた。

 鬼化によって本能や衝動が以前よりも強くなり、瀕死(ひんし)の兄の姿を契機として、家族喪失の寂しさが一気に禰豆子の心に押し寄せて、無防備に泣いたのだった。

優しい兄・炭治郎

 禰豆子が人間を襲いかけたことは、極めて危険な「事件」だった。炭治郎は、元水柱の鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)から、「妹が人を喰った時やることは2つ 妹を殺す お前は腹を切って死ぬ」というルールが言い渡されており、「鬼の禰豆子を殺さない」特例を認めてもらうために、鱗滝と冨岡義勇の命までかけられていた。

 そんな厳しい状況であるにもかかわらず、炭治郎は凶暴化した禰豆子を見ても、無理やりねじ伏せたり、声を荒らげることすらなかった。禰豆子が人を襲おうとした罪は、すべて自分の責任なのだと、鬼の妹に謝り続けた。

<ごめんな 戦わせてごめん 痛かったろう 苦しいよな ごめんな>(竈門炭治郎/10巻・84話「大切なもの」)

 炭治郎と妓夫太郎、人間と鬼という「対極の存在」でありながら、どちらも「妹」にはすこぶる甘い。堕姫と禰豆子は、どちらも「兄の庇護」がないと生きていけない。この強く愛らしい2体の鬼は、兄に守られることで生きている。

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堕姫が兄から離れたくなかった理由