ちなみに、5年前の16年調査でも、同ランキングのトップ5は21年と全く同じ。6位以下には多少の順位変動があるものの旧帝大は全てトップ10入りで、大きな傾向は変わっていない。

◎2021年(大学通信調べ/『大学ランキング2023』より)
◎2021年(大学通信調べ/『大学ランキング2023』より)

 そのほかのランキングでも旧帝大は強い。「人事採用担当者なら気になる」では7大学の全てが、「卒業生が魅力的」でも名古屋大を除く6大学がトップ10にランクイン。

 研究や人材輩出などの面における高い実績に加え、多くの人が受験生時代にあこがれを抱いたであろう大学であることも、安定した高い評価につながったと考えられる。

学びの多様性がコミュ力を伸ばす

 一方で、私立大が強かったのは「コミュニケーション力が高い」の項目。4強に続く5位には明治大がランクイン。

 明治大は計四つのランキングでトップ10に入った。「就職の明治」を掲げ、時代に合わせたスピーディーな就職支援で多くの“納得就職”を実現。社会での卒業生の活躍が高評価につながった。近年は女子学生比率が高まるなど、受験生からも幅広く人気を得る。

 「コミュニケーション力が高い」では、トップ10のうち7大学を私立大が占めた。

 同時に実施した地域別調査でも私立大のコミュニケーション力は高く評価された。各地域の中心的な国公立大に交じって、北海道・東北では3位に北海学園大。東京を除く関東・甲信越では2位に神奈川大。北陸・東海では2位に南山大。近畿では1位に関西大、3位に近畿大。九州では2位に福岡大、3位に西南学院大がそれぞれ入った。

 現場で学生と関わる大学職員はどう感じているのか。神奈川大学就職支援部事務部長の旭馨さんは、企業からの声を踏まえ、こう話す。

 「本学の学生は『真面目で素直。派手さはないが組織になくてはならない存在だ』と評価されることが多いです。多様性のある学生に囲まれて大学生活を過ごすことで、うわべだけでない“中身のあるコミュニケーション”を取る力が養われているのだと思います」

 神奈川大は、伝統ある給費生試験や全国地方入試に積極的な総合大学。他大学に比べて地方出身者が多く、多様なバックグラウンドを持つ学生が集う。地元自治体や商店街など、地域の社会人と連携しながらの学びにも力を入れる。

 多様な同級生と学べるのは、学生が均質化されがちな難関国立大に対する私立大の大きな強み。入試の選択肢が豊富で、さまざまな人が集まる私立大ならではの良さが、社会人からの高評価で裏付けられた形だ。

 社会人からの評価ランキングでは入試難易度が高い大学が押しなべて高評価を得た。

 また、上位に並ぶのは伝統校ばかり。大企業への高い就職率を誇る04年設立の国際教養大など、新しい大学は光るものがあってもランクインしなかった。多くの社会人は自分が受験生だった時のイメージで大学を評価しがちなことが示されたとも言えよう。

(取材・文=松平信恭/大学通信)

※AERAムック『就職力で選ぶ大学 2023』より

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