かつて「億ション」は高嶺の花。だが、今はもう1億円超えは珍しくない。とりわけ都内23区の新築マンションはすさまじく、不動産経済研究所が毎年発表している「新築分譲マンション市場動向2023」によると、昨年の1戸あたりの平均価格は1億1483万円と、1億円の大台を突破した。購入を考えていた人たちの「安くなったら買いたい」という切なる願いは、もう叶わないのか。AERA 2024年2月26日号より。
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東京のマンションに死角はないのか──そう問うと、期せずして「カギを握るのは日本の庶民の力かもしれない」とする趣旨の答えが返ってきた。不動産コンサルタントで独特のマンション投資法で知られる沖有人氏が言う。
「『こんなに高いと買えないじゃないか』という『民意』が出てくると、それがトリガーになるかもしれません。私はバブル時代に国が行った『総量規制』、つまり不動産にお金を融資しない政策が再び発動されてもおかしくないと見ています。だから最近は金融庁のホームページでパブリックコメントのコーナーを定期的にチェックしています」
変化の兆し、あちこちに
東京カンテイの井出武・上席主任研究員によると、外資や富裕層の住宅投資でカギを握るのは「利回り」だという。
「つまり、いくらで貸せるか、賃料しだいなんです。マンション価格が上がると、賃料も上げないと利回りが低くなってしまいます。しかし、賃貸市場の借り手は実需の世界です。上がりすぎると借りられる人が少なくなり、そこから市況が崩れる可能性があります」
井出上席主任研究員によると、すでに昨年後半あたりから首都圏の賃料は頭打ち傾向で、東京23区でも伸びが見られなくなっているという。
マンショントレンド評論家の日下部理絵さんは、中古マンション市場に変化の潮目を感じている。