モノいえば炎上必至、自他ともに認める「叩かれ女」の二人が、日韓の政治、メディアなどに鋭く切りこむ。縦横無尽に広がりつつ的確に着地していく対話、巧みな現状分析。これはもう上質な「読むトークショー」である。
金の頭脳明晰ぶりに加え、肝の据わり具合に瞠目せざるをえない。テレビではゲテモノ扱い、苦情は頻々、孤独を覚えることもあるという彼女に、どこに希望を見いだすべきかと香山は問う。答えは「『言い続ける』ことですよ。乗り掛かった舟であるからには、行き先がどこであるのか、最後まで見極めたい」。なんて強い人なのか。
精神科医・香山の面目躍如たる時代診断も見どころ。「親日か反日か」「敵か味方か」と二分法的に他国を捉えがちな日本社会を、「黒か白か、一〇〇かゼロか」でしか相手を見られない精神疾患に重ね合わせる。はっとする解釈をさらりと提示する話術は、芸の域に達している。
明るい話題ばかりではないが、読後に芽生えるのは、混沌の現代を生き抜いてやろうという闘志。二人のパワーに感化される。
※週刊朝日 2015年9月18日号