【右】砂崎良(さざき・りょう):フリーライター。東京大学文学部卒。古典・歴史・語学・現代史など学習参考書を中心に執筆/【左】承香院(じょうこういん):平安時代の周辺文化実践研究家。子どものときカーテンで自作した平安装束に身を包んで以来、装束や文化を実践しながら独自研究(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 今年の大河ドラマの舞台は平安時代。吉高由里子演じる紫式部が主人公だ。1月10日発売の『平安 もの こと ひと事典』の著者、砂崎良さんと監修の承香院さんに平安時代の楽しみ方を聞いた。AERA 2024年1月15日号より(この記事は「AERA dot.」2024年1月14日に配信された記事の再掲載です)。

【写真】承香院さんの私物の蝙蝠(扇)はこちら

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承香院:私は今日ヒノキでできた檜扇を持ってきましたけど、こういう扇などで女性は顔を隠します。

砂崎良さん(以下、砂崎):私は当時の女性にとっての顔は、現代の下着にあたるということを常日頃言っています。できるだけ見えないようにしているのがいいということをすり込まれるわけです。でも女子校のノリで、女同士だからいいじゃんみたいになることもある。そういうときに扇なんかは、あ、置いちゃおうとなるわけです。

食べることは「下品」

──扇が、一時のマスクみたいに思えてきましたが、例えば食事は顔を隠しながらできませんよね。

砂崎:当時は食べるということ自体、非常に下品だと考えられていたのは、多分そういうことも関係しているんですよね。どうしたって顔をあからさまにしてしまう。言葉は悪いですが、排泄行為のようなもので。それと同じくらい食べることも本能的な行為と思われていたようですね。

承香院:ただ不思議なのは、かい繕う、つまりお化粧はしっかりするんですよね。見られないことを前提にしてるはずなのに、必死にお化粧をする。ちなみに当時男性も、お化粧は怠りなかったです。

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