作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんの秘書を約10年務めた、瀬尾まなほさん(35)。【中編】では、政治家の細川護熙さんとのエピソードや「作家・瀬戸内寂聴」が最後の最後まで書き続けた理由などを聞いた。【後編】では、寂聴さんから初めて怒られた日のことや、長男と寂聴さんの関係などを語ってくれた。
【中編】<寂聴さんの秘書・瀬尾まなほさんが語る「細川護熙氏」との秘話 「先生は好きな人が来ると態度が変わるんです」>より続く
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「初めて怒られたときのことは忘れられません」
それは瀬尾さんのある一言が原因だったという。
「あるとき、『私なんか……』と言ったことがあって、そしたら瀬戸内に『私はこの世でたった一人の人間なんだから、私なんかと自分を粗末にする人間はもう寂庵にはいらない』とピシャリと怒られて今まで怒られたことがなかったので、びっくりしました。言われた瞬間は、びっくりしましたけど、同時にうれしさもありました。私のことを思って叱ってくれてるんだなって。私の存在価値を認めてくれているような気持ちになりましたね」
一方で、言われたときは理解できなかったが、「ここ2年くらいでやっと自分なりの解釈ができるようになったこともあります」と瀬尾さん。
「『物事には 白黒はっきり分かれることだけじゃなくて、グレーもあるんだ』と言われたとき、まだ20代だった私は、『それってどういうこと?』って思ったんです。当時は、『これ正しいですよね? じゃあ何でこうしないんですか?』と自分の正義を振りかざすというか、自分が正しいと思っていることから外れたことに納得できなかったんです。白黒つけずにはいられなくて」