鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)

 母親への怒りと憎しみを思い出し、「前に進めない」と苦しみを打ち明ける26歳女性。「昔の傷をいつまでも思い出して泣いてしまう」自分はを甘えているのかと問う相談者に、鴻上尚史が贈った言葉「澪さんの人生は澪さんのもの」の真意とは?

【相談212】母親に対する怒りと憎しみを思い出して泣いてしまう私は弱すぎるのか甘えているのでしょうか(26歳 女性 澪)

 鴻上さん、初めまして。

 最近鴻上さんの人生相談を知り、応募させていただきました。

 幼少期の心の傷、自分自身との向き合い方について相談したいです。

 母親は正直、私からすると毒親です。

 幼少期から急に不機嫌になって罵詈雑言を言われたり、身内の悪口や自分の幼少期の辛い話を聞かされたり、兄や弟はやりたい事をやっているのに私のやりたい事は「お前には無理」だと言われ、意見を言うとわがままだと言われ急に怒りだしたり泣き始めたりして、自分の気が済むと何事も無かったかのように話し掛けてくる母親が怖く、常に顔色を窺いながらいい子でいなければと思い生活していました。

 社会人になって離れて暮らすようになってから母親に疑問を持つようになり、母親に幼少期にされた事・言われた事で辛かったと話し、私と関わらないで欲しいと話をしたのですが、謝罪があるわけでも態度を改めることも無く何十件も連絡が頻繁にくるようになり、私も精神的に参ってしまい体調を崩すようになりました。

 毒親という言葉を知ってから毒親関連の本を読み、連絡を断ち、接触しないようにしていました。

 4年ほど連絡を断っていたのですが身内に不幸があり久々に会うことになりました。なるべく会話をしないようにしていたのですが、後日母親が番号を変えてメッセージを送ってきたことで、何十件も連絡がきていた時の恐怖や幼少期のトラウマがフラッシュバックするようになり涙が止まらなくなり、夜は眠れず朝になると身体が上手く動かず仕事も休みがちになってしまいました。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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