話題作に共通するのは、生身の迫力と最新技術の双方が組み合わさっていることだという。
「大人数の肉弾戦が魅力でもある『キングダム』は、実写化ならではのスペクタクルな映像が堪能できる。大軍勢の戦いをCGアニメーションで見ても、そんなに驚かないじゃないですか。本物の人間がぶつかっているからこそ出せる迫力は、まさに実写化の良さを発揮しています」
「減点方式」からの脱却
成功のカギは他にもある。先の小新井さんは「軸」の置き場所が重要だ、と。
「脚色をするなかでも『ここだけは変えてはいけない』という軸を守れるかが、作品の魅力を左右する。原作にはない恋愛要素を入れたり、キャラクターの設定を変えたりといったことがあれば、作品の世界観が一気に損なわれてしまいます」
公開中の映画「ゴールデンカムイ」でいえば、主人公の杉元佐一とアシリパの関係性がどう描かれるか、不安視する声も多かったという。
「ファンにとっては、二人が相棒の男女として描かれていることも重要な要素の一つなんです。そうした関係性が変えられていたらどうしようという不安もありました。でも、原作と変わらない関係性を感じることができたし、次回作への期待も高まりました」
実写ならではのずばぬけた描写力にも言葉をのんだ。川に入るシーンでは、北海道の厳しい冬の寒さがスクリーン越しに伝わってきたという。
「北海道に住んでいることもあり、よりリアルに感じ取れました。CGのヒグマが襲ってくる恐怖と絶望感も、実写だからこそ描けたものだと思います」
昨年11月には、任天堂で長く愛されるゲームシリーズ「ゼルダの伝説」がハリウッドで実写化されることが発表された。24年冬には人気漫画『推しの子』の実写版も公開される。
魅力的な原作であるがゆえに、「減点方式」で評価されやすかった実写作品。その世界が変わり始めている。(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年2月19日号より